こぶとりじいさん(こぶとり爺さん)

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アニメーションテレビ番組『まんが日本昔ばなし』の内容

大筋は以下
あるところに、頬に大きなこぶのある隣どうしの二人のおじいいさんがいた。片方は正直で温厚、もう片方はこぶをからかった子供を殴るなど乱暴で意地悪であった。
ある日の晩、正直なおじいいさんが夜更けに鬼の宴会に出くわし、踊りを披露すると鬼は大変に感心して酒とご馳走をすすめ、翌晩も来て踊るように命じ、明日来れば返してやるとおじいいさんの大きなこぶを「すぽん」と傷も残さず取ってしまった。

それを聞いた隣の意地悪なおじいいさんが、それなら自分のこぶも取ってもらおうと夜更けにその場所に出かけると、同じように鬼が宴会している。
隣のおじいいさんは出鱈目で下手な踊りを披露したので鬼は怒ってしまい、「ええい、下手くそ!こんなこぶは返してやる。もう二度と来るな」と言って昨日の翁から取り上げたこぶを意地悪なおじいいさんのあいた頬にくっつけると「今日の宴会はもうやめだ」と興ざめして去ってしまった。
それから正直な翁はこぶがなくなって清々したが、意地悪なおじいいさんはこぶが二つになり難儀した。

宇治拾遺物語
3 鬼にこぶとらるゝ事

これもいまはむかし、右のかほに大なるこぶあるおきなありけり。大よそ【よそ、原作かう、今從一本】(*「一本」は『宇治拾遺物語私註』の本文を指すと原本「凡例」にいう。あるいは「大かた」かと云う。この段に「大かた」の用例は多い。)山へ行ぬ。雨風はしたなくて(*激しくて)歸におよばで(*原文「をよばで」)、山の中に心にもあらずとまりぬ。又木こりもなかりけり。おそろしさすべきかたなし。木のうつぼの有けるにはひ入て、目もあはずかがまりてゐたるほどに、はるかより人の聲おほくしてどゞめき(*原文「とゞめき」)くるおと(*原文「をと」)す。いかにも山の中にたゞひとりゐたるに人のけはひのしければ、すこしいき出る心ちしてみいだしければ、大かたやう\/さま\〃/なる物どもあかき色には青き物をき、くろき色にはあかきものをき、たふさぎ(*原文「たうさき」、犢鼻褌〔ふんどし〕)にかき、大かた目一あるものあり、口なき物など大かたいかにもいふべきにあらぬ物ども百人ばかりひしめきあつまりて、火をてんのめ(*「天の目」で星の意かと云う。)のごとくにともして、我ゐたるうつぼ木のまへにゐまはりぬ。大かたいとゞ物おぼえず。
むねとあるとみゆる鬼よこ座(*正座)にゐたり。うらうへ(*左右)に二ならびに居なみたる鬼かずをしらず。そのすがたおの\/いひつくしがたし。酒まゐらせ(*原文「まいらせ」)あそぶありさま、この世の人のする定なり。たび\〃/かはらけはじまりて、むねとの鬼ことの外にゑひたるさまなり。すゑよりわかき鬼一人立て、折敷をかざしてなにといふにかくどき〔口説〕ぐせざること【ざ、原作せ、今從一本】をいひて、よこ座の鬼のまへにねりいでゝくどくめり。横座の鬼盃を左の手にもちてゑみこだれ(*笑い興ずる)たるさま、たゞこの世の人のごとし。舞て入ぬ。次第に下よりまふ。あしくよくまふもあり。
「あさまし。」とみるほどに、このよこ座にゐたる鬼のいふやう、「こよひの御あそびこそいつにもすぐれたれ。たゞしさもめづらしからん、かなで〔弄〕(*演奏・舞)をみばや。」などいふに、この翁ものゝつきたりけるにや、また神佛の思はせ給けるにや、「あはれはしりいでゝまはゞや。」とおもふを、一どはおもひかへしつ。それに(*しかるに)なにとなく鬼どもがうちあげたる拍子のよげにきこえければ、「さもあれたゞはしりいでゝまひてん。死なばさてありなん。」と思とりて、木のうつぼよりゑぼしははなにたれかけたる翁の、こしによき(*手斧)といふ木きるものさして、よこ座の鬼のゐたるまへにをどり(*原文「おどり」)出たり。この鬼どもをどりあがり(*原文「おどりあがり」)て、「こはなにぞ。」とさわぎ(*原文「さはぎ」)あへり。おきなのびあがりかゞまりてまふべきかぎり、すぢりもぢり(*身をくねらせて)えいごゑ(*原文「ゑいごゑ」。気合いを入れた掛け声の意。)をいだして一庭をはしりまはりまふ。よこ座の鬼よりはじめてあつまりゐたる鬼どもあざみ興ず。
よこ座の鬼のいはく、「おほくのとしごろこのあそびをしつれども、いまだかゝるものにこそあはざりつれ。いまよりこのおきなかやうの御あそびにかならずまゐれ(*原文「まいれ」)。」といふ。おきな申やう、「さたにおよび(*原文「をよび」)候はずまゐり(*原文「まいり」)候べし。このたびにはかにてをさめ(*原文「おさめ」)の手〔秘曲〕もわすれ候にたり。かやうに御らむにかなひ候はゞ、しづかに(*〔改めて〕落ち着いて)つかうまつり候はん。」といふ。よこ座の鬼、「いみじう申たり。かならずまゐる(*原文「まいる」)べきなり。」といふ。奧の座の三番にゐたる鬼、「この翁はかくは申候へども、まゐらぬ(*原文「まいらぬ」)ことも候はんずらん。おぼしゝ(*「『…。』とおぼえ候〔に〕」であるとも云う。)しちをやとらるべく候らん。」といふ。よこ座の鬼「しかるべし\〃/。」といひて、「なにをかとるべき。」とおの\/いひさたするに、よこ座の鬼のいふやう、「かのおきながつらにあるこぶをやとるべき。こぶはふくのものなればそれをやをしみ(*原文「おしみ」)おもふらん。」といふに、おきながいふやう、「たゞ目はなをばめすともこのこぶはゆるし給候はん。とし比もちて候ものを、ゆゑ(*原文「ゆへ」)なくめされすぢなきことに候なん。」といへば、よこ座の鬼、「かうをしみ(*原文「おしみ」)申物なり。たゞそれを取べし。」といへば、鬼よりて「さはとるぞ。」とて、ねぢてひくに大かたいたきことなし。「さてかならずこのたびの御あそびにまゐる(*原文「まいる」)べし。」とて、曉に鳥などもなきぬれば鬼どもかへりぬ。おきなかほをさぐるに年來ありしこぶあとかたなくかいのごひ(*原文「かひのごひ」)たるやうにつや\/なかりければ、木こらんこともわすれていへ(*原文「いゑ」)にかへりぬ。
妻のうば「こはいかなりつることぞ。」とゝへば、しか\〃/とかたる。「あさましき事かな。」といふ。となりにあるおきな左のかほに大なるこぶありけるが、このおきなこぶのうせたるをみて、「こはいかにしてこぶはうせ給たるぞ。いづこなる醫師のとり申たるぞ。我につたへ給へ。このこぶとらん。」といひければ、「これはくすしのとりたるにもあらず。しか\〃/の事ありて鬼のとりたるなり。」といひければ、「我その定にしてとらん。」とてことの次第をこまかにとひければをしへつ。このおきないふまゝにしてその木のうつぼに入てまちければ、まことにきくやうにして鬼どもいできたり。ゐまはりて酒のみあそびて、「いづらおきなは。まゐり(*原文「まいり」)たるか。」といひければ、このおきなおそろしと思ひながらゆるぎ出たれば(*慄えながら出ると)、鬼ども「こゝにおきなまゐり(*原文「まいり」)て候。」と申せば、よこ座の鬼「こちまゐれ(*原文「まいれ」)。とくまへ。」といへば、さきのおきなよりは天骨もなくおろ\/かなでたりければ、よこ座の鬼「このたびはわろく舞たり。かへす\〃/わろし。そのとりたりししちのこぶ返したべ。」といひければ、すゑつかたより鬼いできて、「しちのこぶかへしたぶぞ。」とて、いまかた\/(*原文「かた\〃/」。片方の意。)のかほになげつけたりければ、うらうへにこぶつきたるおきなにこそなりたりけれ。
ものうらやみはせまじき(*すまじき)ことなりとか。

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